
今年6月、オーストラリア政府が支援するプログラムの一環で、ソロモン諸島からカカオ関係者としてご招待を受け、訪問の機会をいただきました。“カカオごと”ではソロモン諸島のカカオ豆を輸入しており、そのご縁で現地のカカオ産業の発展に寄与するため、世界各国のカカオ関係者の方々と共に招待された形です。

日本からソロモン諸島までは片道20時間以上。豊かな自然と共に、多様な文化や伝統が息づく魅力的な場所です。訪問の主な目的は、ソロモン諸島のカカオ産業の現状を学び、現地の生産者や関係者との交流を深めることでした。

ソロモン諸島の基本情報
ソロモン諸島は、オセアニアに位置する島国で、約900の島々から構成されています。首都はホニアラで、主要な公用語は英語です。人口は約70万人で、豊かな熱帯雨林や海洋資源に恵まれています。

ソロモン諸島では農業や漁業が主要産業で、特にココナッツ製品が重要な輸出品となっています。しかし、アジア太平洋地域で最も貧しい国の一つであり、頻発する嵐やフレッシュな食品の不足により、健康面で脆弱な状況にあります。農村部の雇用も限られているため、高品質カカオの生産を通じて持続可能な経済発展を目指し、先住民コミュニティと協力して生活改善に取り組んでいます。

カカオへの情熱に溢れた女性たちの活躍
到着後、最初に訪れたのは、観光地としても有名になっているAmazing Graceカカオ農園でした。約20年前、カカオ農家グレース・フェカウさんは夫を亡くし、小さなカカオ農園で家族を支えてきました。現在、その農園は「アメージング・グレース・ブティック・ココア&ガーデンツアー」として成長し、国内外の観光客にユニークなアグリツーリズム体験を提供しています。

参加者の皆さんと一緒にカカオポットを開ける作業を体験しました。農家の日常の一部を直に感じる時間でした。産地や農家によって作業方法は違うが、労力は同じ。これら大変な作業を経て、私達にカカオ豆が届けられます。

グレースさんオリジナルのカカオニブやチョコレートを使ったソロモン諸島の伝統料理
ホニアラ郊外テナルビーチの黒い砂浜に位置するこの施設では、カカオ栽培の見学、伝統料理やチョコレートのデモ、トロピカルガーデンの散策、カカオ製品の購入も楽しめます。このツアーは、ソロモン諸島のカカオ業界が高品質市場や付加価値製品の開発にシフトする中、農業と観光を融合した新たな試みです。

素晴らしいソロモン諸島のカカオ豆を栽培してくれているグレースさんに、輸入したそのカカオ豆を使って作ったカカオ100%チョコレートのチョコレートドリンク、“カカオごと”スタイルで和三盆やカカオティーや柚子で作った和菓子と共に一服差し上げました。


カカオ産地でこうやってカカオ豆を作ってくれる感謝を伝えることができ、喜んでいただいたこと本当に嬉しく思いました。また、ドリンクだけでなく、日本の和三盆にも驚かれていたことが印象的でした。口に入れるとホロッと溶ける繊細さは、日本が誇る砂糖の魅力です。

深く心に響く生産者との対話
もう一つアグネス家族が経営している農園を訪れた際、家族の皆さんと直接お話しする機会がありました。日々の努力や誇りを持ってカカオを育てていることを熱心に語ってくれました。その中で特に印象的だったのは、家族単位での栽培が主流であることと、次世代への技術継承を大切にしている姿勢です。

娘のアグネスさんは、「カカオは私たちの生活そのものです」と語り、収穫から発酵、乾燥までのプロセスを丁寧に説明してくれました。情報が少なかった頃から試行錯誤を重ねて技術を習得し、農家と共に取り組んだ意識改革や努力の軌跡を思うと、本当に胸が熱くなります。このような現場の声を直接聞くことの重要性を、チョコレートを作るメーカーとして改めて実感しました。

チョコレートイベントへの参加
訪問中、ソロモン諸島で開催されたチョコレートイベントにも参加しました。このイベントは、現地のカカオ産業発展を目的としており、メーカーが自慢のチョコレート製品を発表する場となっていす。

私は、このイベントのチョコレートコンクールで審査員として参加しました。さまざまなチョコレート製品をテイスティングし、まだまだ技術的には発展途中ですが、ソロモン諸島産のカカオを使用した製品の多様性と品質の高さに感銘を受けました。

このイベントを通じて、現地のカカオ産業の可能性をさらに実感すると同時に、生産者の努力と情熱に深く感動しました。また、現地の人々との交流を通じて、カカオがいかに地域社会にとって重要な存在であるかを改めて認識しました。

カカオ豆の品質と可能性
ソロモン諸島で収穫されるカカオは独特な遺伝的バリエーションを持ち、ほとんどの栽培エリアではさまざまな世代の遺伝子が組み合わされています。中でもアメロナードが最も一般的で、フォラステロから派生した品種です。
フォラステロは歴史的にファインフレーバーカカオとみなされていませんでしたが、南米や中米とは異なる太平洋地域の栽培環境では独特で興味深いフレーバープロファイルを生み出し、多くのチョコレートメーカーが注目しています。“カカオごと”でもじわじわと人気が出ている産地です。

また、近年のカカオ価格高騰(カカオショック)は、世界中のチョコレート業界に影響を及ぼしています。このような状況下で、ソロモン諸島の高品質なカカオ豆は新たな供給源として注目を集めています。
この品質の高さを活かし、ソロモン諸島のカカオを世界に広める可能性を強く感じました。特に、持続可能な栽培方法や生産者とのフェアな取引を重視するチョコレートブランドにとって、大きな魅力となるはずです。

島時間を楽しむ伝統のお祭り
訪問中、ホニアラからボートで3時間の距離にある島で、伝統的なお祭りに参加する機会がありました。それぞれの家庭が持ち寄った魚や芋を周囲の村人たちと分け合い、皆で楽しむ温かなひととき。携帯の電波も届かないこの島には、家族や村人を大切にする本来の人間らしい価値観が、今もなお息づいていました。

今後への期待
今回のソロモン諸島訪問を通じて、カカオが持つ可能性とその背景にある人々の想いを改めて知ることができました。私たちが日常で口にするチョコレートの背後には、このような努力や情熱が込められていることを多くの方に伝えたいと思います。

最後に、ソロモン諸島の皆さんと各国のカカオ関係者の方々に心からの感謝を申し上げます。この訪問で得た経験や学びを、今後の活動にしっかりと活かしていきたいと思います。
カカオを通じた新たな出会いと学びに感謝しつつ、引き続きカカオの魅力を伝えていきたいと思います。
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