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結晶カカオ
溶けないチョコレートという、新しい問い チョコレートは、溶けるものだと思っていました。 口の中でゆっくりと溶けていく感覚。 その瞬間に広がる香り。 それがチョコレートの体験だと、疑いもなく信じていました。 けれど、ある問いが生まれました。 溶けることで失われるものが、あるとしたら。 届かない香りがある 高品質なカカオは、フローラルな香り、果実のニュアンス、発酵由来の複雑さを持っています。 けれど暑い地域では、チョコレートは溶けてしまうために、味わう前に選択肢から外されることがある。形を失うとき、その繊細な香りの一部も、同時に失われていきます。 カカオの豊かさが届かない場所がある。 その事実が、ずっと引っかかっていました。 和菓子が、ヒントをくれた 日本の和菓子には、溶けなくても香りが広がるものがあります。 噛むことで、素材の香りが解放される。 溶けない=風味がない、ではない。 その気づきが、結晶カカオの出発点でした。 チョコレートの「溶ける」という構造を、問い直してみたら、どうなるか。構造が変われば食感が変わり、食感が変われば香りの知覚が変わる。


カカオ碗
唐津の土に宿る、カカオの時間 茶のための碗があるように、 カカオにも、向き合うための碗を。 そう思い続けていました。 小石原焼・森山寛山窯との協働で生まれたカカオハスク茶碗は、 その最初の答えでした。 けれど、探求は続いていました。 カカオをもっとも深く味わうための器とは、何か。 香りが立ちやすい形とは。 手に触れたとき、何を感じてほしいか。 問いを重ねながら、次の器へと向かいました。 唐津焼・健太郎窯との、新たな挑戦 声をかけたのは、唐津焼の健太郎窯でした。 唐津焼は、400年以上の歴史を持つ九州の焼き物です。 「一楽二萩三唐津」という言葉があるほど、 茶の湯の世界で古くから愛されてきた焼き物。 土の質感と、炎が生む表情。 使うほどに手に馴染み、深みを増していく。 カカオと向き合う器として、 これ以上ない土台があると感じました。 ハスクが、再び釉薬になる 釉薬には、前作と同じく、 カカオの殻——ハスク——を灰にした素材を用いています。 チョコレートにはなれないその殻が、 土と炎によって、器の表情になる。 カカオの第二の生命は、 唐津の土の上でも


カカオの第二の生命
カカオハスク茶碗が生まれるまで ※この茶碗は、カカオハスク釉薬の最初の試みとして、小石原焼・森山寛山窯との協働で生まれたものです。現在は唐津焼バージョンが誕生し、その物語は新たな章へと続いています。 チョコレートを作るとき、 カカオ豆の外側を覆う薄い殻——ハスク——は、取り除かれます。 それは、チョコレートにはなれない部分です。 上質なものはカカオティーとして楽しまれることもありますが、 すべてを使い切ることはむずかしく、 静かに、廃棄されていくこともある。 このハスクを、器にできないか。 そんな問いが、カカオハスク茶碗の始まりでした。 約束から、始まった 相談しようと思っていた窯元があります。 福岡県東峰村で小石原焼を手がける、昔からの知人、小野窯元さん。 けれど、相談の前に、知らせが届きました。 2023年7月。九州北部を襲った大雨により、 東峰村では11軒もの窯元が被災し、 小野さんの工房と窯も、全壊してしまったのです。 言葉を失いました。 それでも小野さんは、前を向いていた。 「復興したら、必ず一緒に作りましょう」 その約束を交わし、 小
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