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カカオ一服という時間
チョコレートを、飲む。 その発想は、実は新しいものではありません。 カカオは古代より、飲み物として人と深く結びついてきた植物です。儀式に、薬に、日々の滋養に——液体としてのカカオが、長い歴史の中にありました。 甘い固形のチョコレートとして世界に広まったのは、ずっと後のこと。 カカオ一服は、その原点に立ち返る一杯です。 なぜ、茶筅で点てるのか カカオ100%のチョコレートにお湯を注ぐ。 それだけでは、カカオの脂肪分と水分はうまく混ざり合いません。分離し、香りも十分に立ち上がらない。 茶筅で素早く点てることで、はじめて乳化が起き、香りが解放され、なめらかな一杯になります。 茶筅という道具は、抹茶のために生まれたものです。けれど、カカオと出会ったとき、まるでここに来るべくして来たような自然さがありました。 お客さんによく聞かれます。「どこからこの発想が?」と。 正直に言うと、今となっては思い出せません。カカオと茶筅が、いつの間にか手の中で出会っていた。そうとしか言いようがない。 点てるという所作は、ただ混ぜることではありません。 お湯の温度を感じながら


香りを、見るということ
カカオごとの香の図 チョコレートを口にする前に、 まず、香りが来ます。 鼻に近づけた瞬間に広がるその香りが、 これから口にするものへの期待を、静かに形作っていく。 香りは、味わいの入口です。 けれど香りは、目に見えない。 感じることはできても、言葉にするのは難しく、 人に伝えようとすると、どこかもどかしさが残る。 カカオごとの「香の図」は、 その見えない香りを、目で見えるかたちにするために作った、 オリジナルの指標図です。 源氏香図から、ヒントを得て Photo by 文化遺産オンライン 香道に、「源氏香図」という図があります。 平安時代に生まれた香道は、香りを「嗅ぐ」ではなく「聞く」と表現します。 「聞香(もんこう)」——耳を澄ませるように、香りに静かに向き合う。 その姿勢そのものが、香道の美意識です。 源氏香図は、源氏物語の各帖に対応した香りの名前が記された図で、 参加者が目を閉じて香りを聞き、どの帖かを当てる「香合わせ」という遊びに使われていました。 複雑で見えないものを、 図というかたちで捉えようとした先人たちの知恵。...
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