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ウルバンバの谷と、カカオの記憶
カカオ豆そのものを、初めて口にしたのは、 2022年、パリのサロン・ド・ショコラでした。 チョコレートとしてではなく、 素材としてのカカオに触れたその瞬間、 これまで知っていたものとはまったく違うと感じました。 香りが立ち上がり、 口の中でゆっくりと広がっていく。 その体験は、静かで、しかし確かな衝撃として残りました。 そのとき紹介してもらったのが、 ヨーロッパでカカオ豆の調達を行う、 Cacao LatitudesのValentinaでした。 サンプルとして受け取ったカカオ豆を持ち帰り、 試作を重ねる中で、 ひとつの豆に、強く惹かれていきました。 ペルー、ウルバンバの谷で育つ チュンチョと呼ばれるカカオです。 香りは力強く、 どこか大地を感じるような深さがある。 焙煎によって表情を変え、 繊細さと荒々しさの両方を持っている。 扱うのは、簡単ではありません。 豆は小さく、殻が多く、 チョコレートになる部分は限られています。 それでもなお、このカカオに惹かれ続けているのは、 その不安定さの中にこそ、 他にはない魅力があるからかもしれません。 ウルバ


カメルーンで見た、カカオ品質を支えるもう一つの現場
Yaoundé, Cameroon 2025 カメルーンを訪れる前、カメルーン産のカカオは品質や管理の面で課題が多いと聞いていました。 アフリカのカカオ産地を訪れるのは初めてで、正直なところ、どんな景色が待っているのか想像がつきませんでした。 現地に降り立ってまず目に入ったのは、赤い土でした。 カカオ産地といえば、深い緑に覆われた風景を思い浮かべます。カメルーンの景色は、その印象とは少し違っていました。 この赤土が、カカオの個性にも影響を与えているのだと、後から知ることになります。 カカオ品質を支えるセンター・オブ・エクセレンス 今回視察したのは、カカオの品質向上と生産者支援を目的に設けられた「センター・オブ・エクセレンス(Center of Excellence)」です。 他の産地でも同様の施設を訪れたことがありますが、ここでも発酵・乾燥の工程、品質評価、生産者への技術指導が丁寧に行われていました。 施設には水道も整えられており、品質管理に必要な環境が揃っています。 農園と市場の間に立つ、重要な場所です。 センターを案内してくれたのは、品質管理


ソロモン諸島のカカオと出会う旅
Guadalcanal, Solomon Islands 2024 カカオごとでは、ソロモン諸島のカカオ豆を輸入しています。 そのご縁から、オーストラリア政府が支援するプログラムの一環として、ソロモン諸島を訪問する機会をいただきました。 日本からソロモン諸島までは片道20時間以上。 豊かな自然と多様な文化が息づくこの国で、カカオをめぐる人々の想いに触れる旅が始まりました。 カカオへの情熱に溢れる農家 最初に訪れたのは Amazing Grace Cocoa Farm 。 農園に足を踏み入れてまず感じたのは、その清潔さでした。 人が通る場所には枯れ葉が残らないよう丁寧に掃除がされています。 想像していた以上に整った環境に、少し驚きました。 その佇まいが、オーナーであるグレース・フェカウさんという人を、会う前から伝えていました。 グレースさんは小柄ながら、話す言葉に芯があります。 夫を亡くした後、小さな農園からひとりでカカオ栽培を始め、20年以上かけて今の形に育て上げた人です。 現在では "Amazing Grace Boutique Cocoa &


カカオごとは、どこから生まれたのか
ドミニカ共和国 カカオマスタークラスでの8日間 San Francisco de Macorrís, Dominican Republic 2023 カカオごとを立ち上げる5ヶ月前のことです。 前の仕事を辞め、自分の進む道を改めて考えていた時期に、ドミニカ共和国で開催されるカカオマスタークラスへの参加が決まりました。 何かを探していた、というより、自分の中にあるものを確かめに行った旅だったのかもしれません。 世界中のカカオ関係者が、同じ場所に集まった 主催は、スペシャリティカカオを取り扱うCacao Latitudes。 カカオ生産者、研究者、ショコラティエ、チョコレートメーカーなど、世界各国からカカオに関わる人々が集まる国際教育プログラムで、私はその初回プログラムに参加する機会をいただきました。 8日間、大学での講義とカカオ農園での実践を組み合わせながら、カカオ産業全体を体系的に学びます。 カカオの歴史や植物学から、農園管理、発酵と乾燥、認証制度、物流とマーケット、品質評価まで。 参加者はカカオ農園経営者、メーカーオーナー、ショコラティ
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