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カカオの向こうにある、人々の暮らし

7 日前
読了時間: 4分

Wewak, Papua New Guinea April 2026


パプアニューギニアを訪れました。目的は、北部の町ウェワク(Wewak)で開かれたカカオの品評会「Greater Sepik Cocoa of Excellence & Trade Expo 2026」への参加です。

日本から遠く離れた南太平洋の国。そこで出会ったのは、豊かな自然の中で育つカカオと、その土地に暮らす人々でした。



カカオが暮らしの中にある場所



ウェワクに着くと、強い日差しと突然の雨、濃い緑に囲まれた風景が広がっていました。舗装されていない道を進み、カカオが育つ場所を訪ねます。



木々の間には赤や黄色のカカオの実がなり、収穫された豆は発酵箱の中で少しずつ変化していきます。


普段、私たちが手にするカカオ豆は、収穫、発酵、乾燥という工程を経たものです。けれど、その前には、カカオを育て、収穫し、手をかける人々の日々の暮らしがあります。


大雨の中でも、カカオについて語り続ける生産者たち。ここでは、カカオは単なる仕事ではなく、生活そのものなのだと感じました。



370の農家が集まる、カカオの祭典



今回の品評会には、パプアニューギニア全土から370の農家がカカオを出品しました。6名の国際審査員による評価を経て、金賞3名、銀賞2名、銅賞3名が選ばれています。


会場には約150名の農家をはじめ、国内外からカカオに関わる人々が集まりました。カカオの品質を競うだけではなく、地元の食材を使った料理やデザート、接ぎ木の技術を競う催し、伝統的な踊りなど、地域の文化とともにカカオを祝う時間が流れていました。



海外から来た私たちの話を、一言も聞き逃すまいとスマートフォンで記録する人、腕を組んでじっと考え込む人。もっとおいしいカカオをつくりたいという熱意が、その真剣な姿にあふれていました。



金賞を受賞した生産者には、海外バイヤーとの商談の機会が与えられます。自分たちが育てたカカオが、海を越え、世界の市場へとつながっていく。この品評会は、生産者たちにとって、そんな可能性を持つ場所でもありました。



カカオを、私のやり方で伝える



品評会の夜、現地の人々にカカオごとの小さなセレモニーを披露する機会がありました。

南国でも溶けないチョコレート「結晶カカオ」を味わっていただき、茶筅で点てたカカオ100%の一服に、和三盆の菓子を合わせます。日本の茶の湯や和菓子の技法を通して、カカオの新しい味わい方を伝える。遠く離れた産地で、カカオごとが大切にしていることを表現できた時間でした。



船で渡った島で


滞在中には、ウェワクから船で島へ渡る機会もありました。その島には、戦争によって多くの人が命を落とした歴史があり、今もその記憶が語り継がれています。島の人から直接聞いたその話は、教科書からは伝わってこない当時の悲惨さを、肌で感じるものでした。


そんな歴史を語り継ぐ島で、村の人々に結晶カカオを渡すと、最初は不思議そうに口に運び、やがて笑顔を見せてくれました。



私は「いつか、ここのカカオでチョコレートを作りたい」と、村の人たちに伝えました。カカオを通して、言葉や文化の違いを越えてつながることができる。そのことを、あらためて感じた出来事です。


グッドイナフ島の生産者、ポールさん


金賞の授賞式で。3人の受賞者のうち、中央の緑のシャツに帽子の方がポールさん。
金賞の授賞式で。3人の受賞者のうち、中央の緑のシャツに帽子の方がポールさん。

品評会で金賞を受賞した3名のうちのひとりが、ミルン湾州グッドイナフ島(Goodenough Island)のポール・エシロンさん(Paul Esiron)です。前年の国内大会でもトップ10に選ばれていたそうです。

直接お話しできたのは挨拶程度でしたが、穏やかで誠実そうな姿が印象に残っています。


大会のあと、受賞した生産者たちのカカオ豆のサンプルを受け取りました。日本に戻ってから、それぞれの豆を試食し、香りや味わい、品質を確かめます。その中で特に印象に残ったのが、ポールさんのカカオでした。ほかの受賞豆と比べても味わいに複雑さがあり、興味深い個性を感じたのです。


金賞という評価だけではなく、自分自身で味わい、選んだカカオ。この豆を、日本へ届けることにしました。



グッドイナフ島から、日本へ




グッドイナフ島で育てられたカカオ豆は、島から近くの国内空港へ運ばれ、首都ポートモレスビーへ。そこから、2026年7月18日に6年ぶりに再開したニューギニア航空のポートモレスビー-成田線の、再開初便で日本に到着しました。


島から島へ、そして海を越えて。いくつもの場所を経て、カカオ豆が日本に届きました。

現地で出会った生産者たちの姿や、カカオが育つ土地の風景。その記憶とともに届いた豆を、今度は日本の焙煎士たちに託します。



京都の決勝へ


このカカオは、2026年11月に京都で開かれる「Japan Cacao Roasting Championship(JCaRC)」の決勝で使われます。予選で使うのはソロモン諸島の豆、決勝がこのパプアニューギニアの豆です。メラネシアの海で隣り合う二つの島の豆が、予選と決勝をつなぎます。


同じカカオ豆でも、焙煎によって香りや味わいは変わります。ポールさんのカカオが、日本でどのような表情を見せるのか。その可能性を楽しみにしています。



カカオの向こうに


一粒のカカオの向こうには、いつも、それを育てる土地と人がいます。土地の風景、人々の暮らし、受け継がれてきた文化。


パプアニューギニアで出会った人々と、そこで過ごした時間は、これからも私の中に残り続けます。




 
 
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