島の記憶
8月30日
読了時間: 2分

南の島の産地を訪ねると、いつも同じものに出会います。
ココナッツと、マンゴー。
朝でも昼でも、誰かが何かを剥いていました。
熟した甘さと、湿った空気が、いつも一緒にありました。
マンゴーに、カカオニブ


ソロモン諸島でも、パプアニューギニアでも、切ったマンゴーにカカオニブを散らしたものが出てきました。
パプアニューギニアでは、半分に割ったココナッツが器でした。
これは、島に昔からあった食べ方ではありません。
カカオ産業を支える人たちが伝えたものです。
産地では長いあいだ、カカオは豆のまま出ていくものでした。育てた人が、その味を知らないまま終わることも珍しくありません。
その豆が砕かれて、島の果実の上に戻ってくる。
今月の菓子は、この一皿から始まっています。
ココナッツの木の下で

カカオの木のすぐ横に、ココナッツの木が立っています。
喉が渇けば実を落とし、穴を開けて飲む。飲み終えたら割って、白い果肉をスプーンですくう。
飲みものも、器も、そこにありました。
分け合う食卓

村では、切った果実が大皿にのって回ってきます。
子どもが一切れ手に取って、そのまま食べていく。
島の記憶として残っているのは、大きな出来事ではなく、こういう場面のほうでした。
八月の菓子

今月は、ガーナ・タンザニア・ペルー、産地の異なる3つのカカオニブに、島で食べた果実を重ねました。

カカオティーは、カカオそのものの味わいです。果実の余韻がゆっくりと立ちのぼり、静かに広がります。
ココナッツは、島の日常そのものです。甘くてまろやかな香りが、カカオの深みと静かに溶け合います。
マンゴーは、熟した果実の記憶です。トロピカルな甘さが、口の中でゆっくりと広がります。
口に含むたびに、島の空気が少し戻ってくるような気がします。
カカオティーを淹れて、その一粒をどうぞ。



